膝の痛み

 

 膝の痛み

 
膝の痛みは加齢による関節軟骨の損傷、激しいスポーツなどによる障害、転倒や事故などによる外傷、立ち仕事や日常生活から受ける負担、など様々です。
 
膝に水が溜まる原因は関節内に炎症があるからです。損傷、障害、外傷、負担、疾患などで炎症が起きると次のような症状が出て来ます。
 
☑膝全体に痛みや激痛がある
☑膝が腫れて熱を持っている
☑膝のお皿を押したときにぷよぷよ浮いている感じがする
関節の炎症が治まると、溜まっていた水の量も減ってきます。
 
また膝関節以外の可能性も考える必要があります。患者様から痛む箇所を聞き取ると、太ももやふくらはぎである、という方が多くいます。この場合は、膝関節ではなく、筋肉が原因である事が多く治療やストレッチなどで痛みが改善される事があります。正しい治療を行うためにも痛みの箇所をしっかりと把握することはとても重要なのです。
 
主な膝の痛みのとして以下の症例があります。
・腸脛靭帯炎(ランナー膝) ・鵞(が)足炎 ・オスグット病(成長痛) ・膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝) ・タナ障害 ・変形性膝関節症 ・前後十字靭帯損傷 ・内外側側副靭帯損傷 ・半月板損傷
 
 

 腸脛靭帯炎(ランナー膝)


 
 腸脛靭帯炎とは、主に長時間のランニングなどを行った際に、膝の外側が痛くなってくる疾患です。腸脛靭帯炎の発症原因は必ずしもランニングに限定されませんが、ランニング動作でよく生じるため、“ランナー膝”とも呼ばれています。

膝を伸ばしている時は腸脛靭帯は大腿骨の外側の出っ張りの前にあるのですが、膝を曲げてゆくと、おおよそ30度屈曲したところで、出っ張りを乗り越え後方に移動します。このときに腸脛靭帯は大腿骨の外側の出っ張り部分にこすれます。長距離のランニングでは腸脛靭帯が何度もこすれることによって炎症を引き起こし、膝の外側に痛みが生じます。

 

 鵞(が)足炎


鵞足炎とは、膝の「鵞足(がそく)」と呼ばれる部位が炎症を起こしている状態です。膝から5cmほど下がったすねの内側にあり、脛骨に縫工筋、薄筋、半腱様筋の3つがくっついている場所のことです。外見がガチョウの足に似ているという理由で鵞足という名前がつけられました。

鵞足は3つの筋肉がまとまってくっついている場所であるため、動作負荷が集中しやすい構造となっています。これら3つの筋肉は、膝の曲げ伸ばしや膝から下を外側へ捻る動作で働きます。膝の曲げ伸ばしを頻繁に行ったり、膝から下を外側に捻る動作のある運動を継続的に行ったりするアスリートの方に多く見られる疾患です。

原因となるスポーツは多岐にわたりますが、中でも多いのがランニング、バスケットボール、サッカー、水泳の平泳ぎといった、膝に負担のかかるスポーツです。

 

 オスグッド(成長痛)・ジャンパー膝


オスグッド・シュラッター病(オスグッド病)は、10~16歳の成長期男子に多く、ジャンプやボールを蹴るスポーツに多く発生します。

身長が伸びることで大腿四頭筋が過緊張したり、膝を伸ばす運動を繰り返したりすることで、大腿四頭筋が膝蓋腱付着部を介して脛骨粗面を牽引し、剥離することで生じます。脛骨粗面(お皿の下の骨)の腫脹、圧痛、運動時の痛みが主な症状です。

スポーツ傷害で膝が痛くなるものにジャンパー膝というものがありますが、オスグッド・シュラッター病との大きな違いは痛みの部位にあります。ジャンパー膝は膝蓋腱(右図の○部分)に痛みが出るのに対し、オスグッド・シュラッター病は脛骨粗(右図の△部分)に痛みが出ます。

 

 タナ障害

タナ障害というのは膝蓋骨と大腿骨の間にある滑膜ひだが、激しいスポーツの屈伸運動など何かの原因で炎症を起こし、膝に痛みや違和感などの症状が出る障害です。

滑膜ひだが膝の屈伸の際に膝蓋骨(膝の皿)と大腿骨(太ももの骨)の間に挟み込まれてその刺激で傷ついたり、それが繰り返すことによって肥厚したりします。スポーツなどで慢性的に膝に負担がかかるとそこに炎症が起こり、痛みや腫れが出ます。

 

 変形性膝関節症

変形性膝関節症とは、軟骨がすり減り、最終的には骨や関節、脚全体の変形までもを引き起こす疾患です。50歳以上で日常的に膝に痛みや違和感があれば注意すべき疾患です。変形性膝関節症の患者数は日本において約2530万人といわれており、60歳以上の有病率は男性で45%、女性では70%にものぼるとされています。

初期では、朝に布団から起きあがる際、もしくは歩きはじめに一時的に膝が痛んだり違和感を感じる程度です。しかし、進行すると正座や階段昇降が困難になり、最終的には安静にしていても痛むようになります。名前のとおり脚が変形していき、日本人では衣服の上からでもわかるほどの極端なO脚へ変形することが多いです。

膝が痛いので徐々に外出や運動を避けてしまい、高齢であれば認知症のきっかけにもなりえます。老化現象の一つと楽観視せず、早期に治療を開始することが大切です。

 

  前十字靭帯損傷

膝の前十字靭帯は、膝関節の真ん中で大腿骨と脛骨をつなぐ強靭な繊維束です。膝関節内で十字に交差した2本の靭帯のうち、前方に位置しているものを膝前十字靭帯と呼びます。大腿骨の後ろから脛骨の前方につながっており、脛骨が前にずれることを防いで関節が異常な角度に曲がることを阻止することにより関節を保護する役割を持ち、それと共に膝関節が滑らかに動くように補助する役割もあります。

膝前十字靭帯損傷は一度の大きな外傷で発生します。受傷時のもっとも特徴的な症状は、激しい痛みの急な発現です。スポーツ活動中であれば、膝関節の痛みや不安定感のためにプレーの続行が不可能になることがほとんどです。

主な原因としてはスポーツ中の膝への過度な負荷が挙げられ、ジャンプや着地、急激な方向転換、他選手との接触などで受傷します。

コンタクトスポーツ:ラグビーやアメリカンフットボール、柔道 … 他の選手との接触によって、本来曲げてはいけない角度まで膝が曲がって受傷することがあります。

ジャンプスポーツ:バスケットボール、バレーボール、ハンドボール … ジャンプの着地による衝撃で受傷することがあります。体育館の床はストップがかかりやすいのでジャンプ着地やカット動作で膝に過度の負荷がかかりやすい傾向があります。

フェイントや切り返しの多いスポーツ:バスケットボールやサッカー … 他人との接触はなくても急な切り返しによって無理な動きをしてしまい、膝前十字靭帯の可動域を超えて受傷につながることがあります。

 

 内側側副靭帯損傷

内側側副靭帯は膝の主要な4つの靭帯の一つで、関節の内側で脛骨と大腿骨を繋げています。他の靭帯と比べて大きな靭帯で、膝の外側からのストレスに抵抗することで、関節の内側部分が開きすぎるのを防ぐ役割をしています。

膝の外側に大きな打撃を受けた時、膝の内側は自然と開き、内側側副靭帯は伸びるか切れてしまいます。特にアメフト、ラグビー、アイスホッケーなどのように他の選手と勢いよくぶつかり合うようなスポーツでは、その力が膝に加わることで痛めることが多いです。また、接触がない場合でも、膝が内側に入るといったことや、極度に捻ることでも損傷することがあります。

 

 半月板損傷

半月板損傷は膝の軟骨の怪我の中で最も多くみられる傷害の一つで、ケガの発症は他の靭帯の怪我と似た原因で起こります。半月板は脛骨の上部にある軟骨で、クッションの役割や脛骨と大腿骨の二つの骨を安定させる役割をもっています。骨通しが擦れ合い摩耗することから保護しています。半月板は年齢とともに固く、そして弱くなっていきます。

体重が膝にかかるほど半月板と骨の密着度が増し、そこに捻る・曲げるといった動作が加わることで引き裂かれます。激しい軸回転運動や急激なストップ動作からのターンなど、膝を無理やり捻る・曲げるような運動は半月板を痛める原因となります。

また、歳を重ねると膝に退化性の変化がみられ、ちょっとしたことや特別何もしていなくても半月板に損傷が見られるようにもなります。